大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和44年(あ)2396号 決定 1970年6月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人山本彦助の上告趣意のうち、公職選挙法一三八条、二三九条三号が憲法前文の趣旨に違反する旨の主張は、原審において主張、判断を経ていない事項に関して憲法違反を主張するものであり、その余は、憲法違反をいう点もあるが、その実質はすべて事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、結局、所論は、すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

弁護人司波実の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、原審において主張、判断を経ていない事項に関して判例違反を主張するものであり、その余は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、結局、所論は、すべて刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(公職選挙法一三九条は、同条但書にあたる場合を除き、立候補届出以後における選挙運動に関し飲食物を提供することだけを禁止したものではなく、立候補届出前における選挙運動に関し飲食物を提供することをも禁止したものと解すべきであることは、いわゆる事前運動を禁止した一二九条等の同法の規定の趣旨とあわせ考えれば明らかであり、所論引用の当裁判所昭和三七年二月一日第一小法廷判決〔刑集一六巻二号四三頁〕にいう「特定の公職の候補者の選挙運動」とは、立候補届出のあった特定の候補者の選挙運動ばかりでなく、特定の選挙につき立候補することが確定し、または予測される特定の者の選挙運動をも含む趣旨に理解すべきである。当裁判所昭和三八年一〇月二二日第三小法廷決定〔刑集一七巻九号一七五五頁〕参照)。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小郷)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例